ワンピースFILE REDを見てきたので感想でも。
まず簡単にワンピース遍歴を。
昔はジャンプを毎週買ってたので1話から読んでいたが、デービーバックファイト辺りで買わなくなり自然と読まなくなった。それからは頂上戦争やホールケーキアイランド等の「今ワンピースが面白い!」と話題になるたびに一気読みする感じに。
現在は単行本103巻まで読んでジャンプ本誌の連載にも追いついている。100巻を超える漫画で定期的に盛り上がり所を持ってこれるワンピースは凄い。
アニメに関してはほとんど見た事がない。放映開始された頃にはリビングで親の前でアニメを見るという行為(部屋にテレビはなかった)がなんだか恥ずかしくて見ていられなかった。映画を見て「シャンクスの声ってシャアの人なんだ」と思ったくらいアニメには縁がない。
そんな感じ、もちろんワンピースの劇場版を見るのは初めて。
アニメと劇場版は見てないけど、103巻もある原作を全部読んで本誌にも追いついているのでファン…いや大ファンと言っても過言じゃないでしょう!というわけでワンピース大ファン面して感想でも書いていきます。
以下ネタバレありで感想とか。
全体を通して
ワンピースFILE RED全体を通した感想は「面白い」よりも「楽しい」映画だった。interestingよりもfunとかjoyとかそんな感じ。
いきなり新時代がフル尺(だよね?)で流れるライブシーンには度肝を抜かれる。宣伝バンバンやっててどこに行っても流れてくるので少々食傷気味だったが映像ありのフルで聞いたら印象が全然違う。でかいスクリーンにバカでかくて良い音響で聴くめちゃウマでパワフルなAdoの歌唱は劇中で起きる様々な描写に説得力を与えるのに十分で、素直に映画館で見て良かったと思わされるパワーがあった。これが家でテレビだとかサブスクだとかで見ると全然違っただろう。
(余談だがライブで空飛ぶシーンでは「これうたプリで見たやつだ!」となった。ウタと肩を並べるプリンス達は恐ろしい。)
出るのはわかっちゃいたけどシャンクスが出てくるシーンは熱い。カタクリ等々のビッグマム海賊団との共闘はぐりぐり動いて爽快。最後のウソップとヤソップの共闘にもちろんルフィとシャンクスの共闘、エンドロールの懐かしい面々等々ファンサービスも充分だ。
欲を言えば麦わらの一味(ルフィ含む)の活躍がもうちょっと見たかったか(2時間で全員の活躍を描くのは無理なのだけど)。
その反面ストーリーに関しては良くも悪くも薄味。ぽっと出感の否めないウタの回想シーンは悲劇的ではあるがストーリーに深みをもたらすほどではなかった。ここら辺はやはり長い時間をかけないといけないので映画という2時間の尺では厳しかっただろう。
ウタウタの実のルールは少々わかり辛く「今どっちの世界にいるんだ?」と混乱する事があったり、映像見てる五老星はなんで無事なんだとか色々思う所はあった。
ワンピースの面白さとは
ワンピースのinterestingはどこにあるか…と考えるとやはり長きに渡って連載されてきたからこその大河ドラマだろう。
もちろん連載当初は友情努力勝利のジャンプ漫画的なワクワクが魅力だったが、25年も続いた今はワンピースの正体だとか…過去の人気キャラの明かされていない秘密だとか…長く続いてきたからこそのドラマ性が面白さに占める割合が大きくなってきた(ここら辺は考察動画が一大コンテンツになってる事からも伺える)。
2時間に満たない映画の尺ではこの大河ドラマを表現する事は不可能なのでfunやjoyなエンタメに振った映画は正解だったんだろう。その分既に書いた通りストーリーが薄味だったのは致し方なし。
シャンクスの重み
シャンクス(そしてその娘ウタ)を出すのはまだ時期尚早だったのでは…というのが本当の所(103巻まで続いてる漫画にまだ早いというのも変な話なわけだが)。
原作で出会っていないシャンクスとルフィをまだ絡ませられないという制約があるのだろう。それをウタウタの世界に麦わらの一味を閉じ込め現実の世界と2つに分けるという方法で解決し、魔王という世界の架け橋となるボスを同時に攻撃する事で撃破出来る…ということで共闘感を出していたが少々強引に思う。
魔王という存在はさすがにワンピースの世界においてアンフェアだろう。悪魔の実があって…エネルのような神がいて…ビッグマムやカイドウみたいな化け物がいて…そんな世界で何を今更と思うかもしれないが、劇中に出てきた魔王という存在はあまりにも"人ならざる者"過ぎてワンピースの世界観にあってなかった(原作で出てきてないだけどプルトンとかポセイドンとかの古代兵器はみんなあんな感じなのかもしれないけれどね)。
魔王相手に次々と大技を繰り出す様子は戦隊モノやスーパーヒーローを見ているようで、「プリキュアっぽいって噂はこれか~」などと思った。
シャンクスという20数年熟成された最高級の食材をメインディッシュにするのならば何の制約もない状態で見たかった…と言うと望みすぎだろうか。
イーストブルーで船を降りてしまった読者にもシャンクスという引きは強く、興行収入は100億を優に超えて過去最高、これから最終章を迎えるワンピースという船を盛り上げるという事を考えれば映画でシャンクスをメインに持ってくるという選択は正しくそして十二分に結果を残している。
しかし原作にほとんど出てこない赤髪海賊団を主役に添えるのは厳しく、能力に関しても詳しく描写する事が出来ないのか鉄砲を撃つだけの船員などどうしてもシャンクス以外の仲間が魅力薄に感じた(民間人巻き添えにしないように手加減してたのかもしれないけど)
白ひげ海賊団は白ひげのオヤジももちろん魅力的だがマルコが一番好きだ。脇を固める幹部が輝いてこそ船長を際立たせる事ができるのではないか。四皇赤髪のシャンクス率いる赤髪海賊団のクルーが鉄砲バンバン撃つだけなんていうのはさすがに格好がつかないだろう。
ワンピースという作品は100巻を超えてなおストーリー性を維持している稀有な漫画だ。それゆえに映画製作において既存のファン向けに寄せるか…新規獲得を目指すのか…大きなジレンマを抱えている。
既存のファンにとっては「ウタ」は受け入れ難い存在なのかもしれない、新規にとってはいきなり出てくるコビーやカタクリとの共闘、突然変身するルフィを見てポカーンとなっているのかもしれない。
ここら辺が今まで映画の興行収入が(ワンピースという巨大な原作に比べると)奮わなかった理由なのかもしれないな。
同監督の「復活のルルーシュ」を見た時も思ったが、人気キャラを登板させる必然性が「大人の事情」を超えていない。20数年寝かせた"あの"赤髪のシャンクスを出すのだからもう少し説得力がほしかった。
ワンピースと共に自分も年齢を重ねてきたのでその辺の事情は飲み込めるようになったがそれでも全く気にならない…と言ったらさすがに嘘になるだろう。
やはりポジティブよりもネガティブの方が書きやすいので長々と書いてしまったが、ワンピースFILE REDは楽しい映画だった。なんだかんだ言ったがシャンクスの出てくるシーンは興奮しウソップヤソップの共闘には胸が高鳴った。
重ねて言うがAdoの歌唱力は凄まじいのでぜひ音響の良い映画館で見て欲しい。
終わりで~す。